広島県のおススメ企画展 尾道美術館「いきものたちとの旅」

木彫りの動物たちが生き生きと展示されている 圧巻の木工芸の世界が待っていた

はしもとみお木彫展 いきものたちとの旅

開催は尾道市立美術館 開催日DATE2026.7.4[土] 〜 2026.9.6[日]
入場料は大人:1000円 学生600円

木の体なのに、どうしてこんなに温かいんだろう――。

SNSでも大人気、生きているかのような動物たちを彫り出す彫刻家・はしもとみおさんの個展「いきものたちとの旅」に行ってきました。
クスノキから命を吹き込まれた犬や猫、野生のいきものたち。彼らの目を見つめていると、どこか懐かしくて、胸の奥がキュンと切なくなるような不思議な感覚に包まれます。

旅の終わりに誰もがやさしい笑顔になれる、そんな素敵な空間の空気感を、写真と一緒にみなさんにお届けします!


展示室を進むと、思わず足を止めて見入ってしまう素晴らしい作品に出会いました。

それが、こちらの木彫レリーフ「銀河鉄道」です。

夜空に浮かぶ満月と、煙を上げて走る機関車。そして、そこからちょこんと顔を覗かせている2匹の猫たち。まるで宮沢賢治の童話の世界からそのまま飛び出してきたかのような、夢のあるドラマチックな作品です。

驚くべきなのは、これがすべて「一枚の木」から彫り出されているということ。
近づいてよく見ると、木の削り跡(鑿の跡)が夜空の星のまたたきや、汽車の疾走感、そして猫たちのふわふわとした毛並みまで見事に表現しています。

陸のいきものたちからさらに進むと、目の前にパッと「青い海の世界」が広がりました。

空間を贅沢に使った、海のいきものたちのインスタレーションエリアです。

部屋全体にふんわりと広がる白いネットやチュールは、まるで静かに流れる美しい海流のよう。そのきらめく海の中に、はしもとみおさんが命を吹き込んだ海の仲間たちが、思い思いに暮らしています。

手前には、のんびりと泳ぐ姿が愛らしい大きなマナティやウミガメ。
中央では、2匹のラッコがちょこんと立って、何かを語りかけるような表情でこちらを見つめています。

さらに視線を上に向けると、背景の壁や天井近くにはマンボウや熱帯魚、ヒトデやウミウシまで!空間のあちこちにいきものたちが立体的に配置されているため、自分自身がダイバーになって、彼らと一緒に海の中をゆっくりと泳いでいるような、そんな不思議な感覚に包まれます。

平面の展示だけでは味わえない、まさに「空間をまるごと旅する」はしもとみおさんの世界観が詰まった、息をのむほど美しいエリアでした。


会場にはお馴染みの犬や猫の彫刻も数多く並んでいましたが、今回の展示で私が最も強く心を揺さぶられたのは、この「マヌルネコ」の作品でした。

世界最古の猫とも言われるマヌルネコの、野生ならではの野性味溢れる表情と、どこかユーモラスで愛くるしい佇まい。その絶妙なバランスが、荒々しくも繊細な鑿(のみ)のタッチによって完璧に捉えられています。

まるで、こちらが観察しているつもりが、マヌルネコの方からも「お前は誰だ?」とじっと見つめ返されているような、そんな心地よい緊張感と生命の息づかいを感じる名作でした。

展覧会のタイトルである「いきものたちとの旅」。
それは単に作品を見るだけでなく、地球上の様々な場所で生きる彼らの眼差しと出会い、その命の尊さに触れる旅なのだと、このマヌルネコの瞳が教えてくれたような気がします。

木の温もりと、いきものたちへの深いリスペクトに満ちた本当に素晴らしい空間でした。心からおすすめしたい展覧会です。