日本の自然を一緒に辿る あの世とこの世を分ける黄泉平坂(よもつひらさか)とは

島根県:あの世とこの世の境界線?緑深い森に佇む神話の地「黄泉比良坂」を辿る

島根県松江市ののどかな里山を歩いていると、突如として厳かな空気が漂う木々の茂みが現れます。
ここが、日本最古の歴史書『古事記』に登場する、現世(この世)と黄泉の国(あの世)の境界とされる黄泉比良坂(よもつひらさか)です。

一歩足を踏み入れると、周囲は深い緑に包まれ、木漏れ日が柔らかく地面を照らしています。
観光地化されすぎていない、日本のありのままの自然の美しさと、どこか背筋が伸びるような不思議な静けさが同居する、旅好きにはたまらない隠れた名所です

敷地内を進むと、まず目を引くのが2本の石柱と注連縄(しめなわ)です。

鳥居の原型とも言われるこの素朴な佇まいが、ここから先は「異界」であることを静かに告げています。

この結界の奥には、神話の中で伊邪那岐命(イザナギノミコト)が黄泉の国の追っ手を防ぐために置き、現代も入口を塞ぎ続けているとされる巨大な大岩「千引の岩(ちびきのいわ)」がひっそりと鎮座しています。
何百年、何千年もこの自然の中に溶け込んできた巨石を前にすると、まるでタイムスリップしたかのようなロマンを感じずにはいられません。

黄泉比良坂がこれほどまでに神秘的に感じられるのは、ここに切ない神話の歴史があるからです。

国生みの神であるイザナギは、亡くなった最愛の妻・イザナミを連れ戻すために黄泉の国を訪れます。しかし、そこで妻の変わり果てた姿を見て恐れおののき、この坂道を必死に逃げ帰ってきました。そして、この場所で大岩を挟んで二人は永遠の別れを告げたのです。

その際、イザナミは怒って「あなたの国の人を毎日1000人殺す」と言い、イザナギは「それなら毎日1500人の産屋を建てよう」と言い返しました。
私たちが今、自然の巡り合わせの中で命を授かり、やがて旅立つという「生と死のサイクル」は、まさにこの場所から始まったとされています。

木々に囲まれた静かな敷地内には、近年設置された「天国への手紙ポスト」があります。
ここは単なる神話の地としてだけでなく、今を生きる人々が、旅立った大切な家族や友人に宛てて手紙を投函する、温かい祈りの場にもなっています。

周囲の風に揺れる葉の音を聞きながら、静かに大切な人を思い浮かべる時間は、この旅をより深いものにしてくれるはずです。

現地には駐車場が数台分あり、目の前が目的地ですので多少歩くのが不自由な方でも訪れることが出来ると思います。

大切な人へ想いを届ける「レターセット」