最初にこの顔を見たとき、
「NHKの八犬伝だったかな?」
そんな曖昧な記憶が、不意に浮かび上がった。
はっきり思い出せない。
けれど、確かに“見られた”感覚だけが残っている。

この人形は、かわいくない。
かといって、完全に怖いとも言い切れない。
目だけが妙に生々しく、
こちらを値踏みするように見返してくる。
動物なのか、仮面なのか、
あるいは物語の途中で立ち止まった存在なのか。
どこかで見た気がする、という感覚
この「見覚えがあるのに思い出せない感じ」は、
NHKの人形劇、とくに 新八犬伝 を知っている世代には
強く引っかかるのではないだろうか。
NHK人形劇『新八犬伝』関連の人形展示。顔だけが切り取られ、こちらを見返してくる

展示を見て、最初の直感は間違っていなかったと分かった。
これは、NHK人形劇『新八犬伝』の人形たちだ。
子供向け番組でありながら、
表情は甘くなく、どこか運命を背負っている。
子供向けだったはずなのに、なぜ今も残るのか

これらの人形は「分かりやすさ」を優先していない。
善悪は単純ではなく、
どの顔にも迷いや影がある。
だからこそ、大人になってから見ても、
記憶の奥を刺激されるのだと思う。
八犬伝の物語を細かく覚えていなくてもいい。
ただ、
「どこかで見た気がする」
「なぜか忘れられない」
その感覚こそが、この人形たちの力なのだと思う。

