日本人も知らない履き物⑫|かもくつとは?

蹴鞠で使われた、貴族のための特別な履き物「かもくつ」

武士や貴族の履き物というと、日常用のものや儀礼用のものを思い浮かべる人が多いかもしれません。
けれど日本の履き物には、特定の遊芸や場面のために用いられたものもありました。

そのひとつが、今回紹介する**「かもくつ」**です。

展示札によれば、かもくつは平安時代末期から盛んに行われた蹴鞠で、貴族が用いた履き物とされています。
ただ歩くための靴ではなく、蹴鞠という文化そのものを支えた履き物だったわけです。

サッカー専用スタジアムがなかった時代、日本では野球場で試合が行われていた。
そんなストーリーにもつながる面白さがあります>

かもくつはどんな履き物か

写真のかもくつを見ると、足先を包み込むような黒い靴部に、長く伸びた革ひも、そして足首から上を覆う柔らかな布が組み合わされています。
一般的な草履や下駄とはかなり印象が異なり、運動性と装いの両方を意識したつくりに見えます。

特に目を引くのは、足をしっかり固定するための長いひもです。
蹴鞠は、まりを地面に落とさないよう蹴り続ける遊びで、優雅さのなかにも繊細な身体操作が求められました。
そのため、かもくつには脱げにくさや足へのフィット感が求められたのではないかと想像できます。

「遊びの履き物」が特別だった時代

現代では、スポーツごとに専用シューズがあるのは当たり前です。
けれど昔の日本にも、こうした用途に応じた履き物の工夫がありました。

かもくつのおもしろさは、単なる古い靴ではなく、
貴族文化の洗練
蹴鞠という身体技芸
履き物の機能性
がひとつに結びついているところです。

戦うための履き物ではなく、まりを蹴るための履き物があった。
この事実だけでも、日本の履き物文化の奥行きを感じさせます。

見た目から感じる、実用品としての工夫

展示品からは、華美すぎる装飾品というより、実際に使うことを前提にした道具感が伝わってきます。
黒い靴部は足先を守るように成形され、上部の布は足首まわりをやさしく覆い、革ひもで全体を締める構造になっています。

この形は、歩行だけでなく、足を上げる・支える・狙って動かすといった動作にも向いていそうです。
蹴鞠は静かな遊びのようでいて、実は履き物の性能が動きやすさに直結する世界だったのかもしれません。

かもくつから見える、日本の履き物の奥深さ

草履、下駄、足半、沓。
日本の履き物は一見すると素朴ですが、実際には身分・場面・用途に応じて驚くほど細かく分かれていました

かもくつは、そのなかでも特に
「何のために履くのか」
がはっきり見える一足です。

履き物は、ただ足を守る道具ではない。
その時代の遊び、作法、美意識まで映し出す文化資料でもある。
かもくつは、そんなことを教えてくれる存在だと感じます。

まとめ

かもくつは、平安時代末期から盛んになった蹴鞠で、貴族が用いた履き物とされるものです。
現代でいえば競技用シューズにも通じるような、目的に合わせて考えられた履き物だったのでしょう。

かもくつのように、かつては「遊びのための履き物」が存在した日本。
そして昭和の時代には、野球場でサッカーが行われていた。

環境は大きく変わりましたが、
足でボールを扱う文化そのものは、形を変えながら続いてきたのかもしれません。

何気なく見過ごしてしまいそうな一足でも、背景を知るとぐっと面白くなります。
日本の履き物文化には、まだまだ「日本人も知らない」世界が残っています。