
展示室に入ってまず目を引いたのが、この不思議な人型のスタンディ。
どこか間の抜けた表情で、団扇を持って踊るような姿をしています。
実はこれ、江戸時代の絵本(草双紙)に描かれた人物を、
原本から一枚トリミングして再構成したものだそうです。
ガラスケースの中には、元になった絵本が開いた状態で展示されていて、
そのすぐそばに、このスタンディが置かれていました。
来館者が一緒に並んで写真を撮れるような配置になっていて、
江戸の庶民文化を「鑑賞」ではなく「体感」させる工夫が感じられます。
元の絵本を見ると分かる面白さ

原本のページをよく見ると、
この独特な顔立ちは決して一人だけのものではなく、
同じような表情の人物が何人も描かれています。
写実とはほど遠いのに、
どこか感情や動きが伝わってくるのが不思議です。
現代の「かわいい」とも、「ゆるキャラ」とも違う、
江戸時代の庶民感覚そのものが、
200年以上の時間を越えて、そのまま立体化されたようでした。

展示の面白さは「切り取り方」にある
このスタンディが印象的だった理由は、
単に拡大したからではなく、
絵本の1ページから「一人分」を切り出した点にあると思います。
本の中では脇役だった存在が、
展示空間では主役になる。
そんな視点の転換が、
古い資料をぐっと身近にしてくれる展示でした。

