職場のひさしで始まった、あるイソヒヨドリの子育て

日本の野生動物 / Wildlife of Japan

海辺の幸せの青い鳥が職場に現れて・・・

海辺の鳥という印象が強いイソヒヨドリが、
今年は自分の職場のひさしで子育てをしていた。

最初に気づいたのは、出勤時にふと見上げたひさしの上。
灰色がかった個体がじっととまり、
くちばしにはトカゲのような獲物をくわえていたメスの親鳥だ。
「あ、これは子育て中だな」と思い、
それからはなるべく刺激しないよう、距離を保って見守ることにした。

日中は人の出入りが多い職場だが、
イソヒヨドリたちは意外なほど落ち着いて行動していた。
餌を運ぶ個体、周囲を警戒する鮮やかな成鳥。
ひさしの上という、人間にとっては何気ない場所が、
彼らにとっては立派な繁殖場所になっていた。

別の日には、近くの植え込みに鮮やかなブルーのオスが姿を見せることもあった。
赤い実の残る低木の中で一息つき、
また静かにひさしへ戻っていく。
こちらができるのは、
作業の合間にそっと視線を向けることくらいだ。

自分の職場という、毎日通う場所で始まった野鳥の子育て。
特別なことは何もしない。
邪魔をしないように、変わらない日常を保つだけ。
その「見守る距離感」こそが、
人と野鳥が同じ空間で共存する一つの形なのかもしれない。

いつのまにか幸せの青い鳥たちは、子育てを終えて去っていった。

カメラ:CANON EOS7D MarkⅡ レンズ:EF100-400mm L IS USM