戌(いぬ)は、従うだけの干支ではない

日本神話・日本文化 / Japanese Mythology and Culture

いぬと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは
「忠実」「従順」「番犬」といった姿かもしれない。

主人に仕え、
命令を守り、
家や人を守る存在。

十二支の中でも、
戌はもっとも分かりやすく
「役目」を持たされた存在に見える。

けれど本当に、
戌は「従うだけ」の干支なのだろうか。


酉の次に来る理由

酉は、
広がり、試されてきた流れを整え、
一度きれいに区切りをつけた。

物事は、
いったん形になった。

だが、
形になったものは
放っておけば崩れてしまう。

そこで置かれているのが、戌だ。

戌は、
守る役であり、
見張る存在でもある。

完成したものを、
簡単に失わせないために。


戌が象徴するもの

戌が象徴するのは、
忠誠ではなく責任

いぬは、
理由もなく守らない。

信じる相手があり、
守るべき場所があり、
そのために立ち続ける。

戌は、
「ここまでは良かった」と
認めたものに対して、
最後まで向き合う存在だ。


「戌」の文字が示すもの

「戌」という字には、
滅びる、終わる、
といった意味が含まれている。

一見、
不吉にも見える言葉だ。

けれどそれは、
何もかもが消えるということではない。

不要なものを退け、
本当に大切なものだけを残す。

戌は、
守るために削ぐ段階の干支なのだ。


写真のいぬが語ること

写真のいぬは、
前に出すぎず、
後ろにも下がらず、
ちょうど真ん中にいる。

表情は穏やかで、
どこか覚悟がある。

このいぬは、
命令を待っているようには見えない。

すでに
「自分の役目」を
理解している。

それが、戌の姿だ。


見張るという役割

戌は、
動かない。

派手な変化を起こさない。

けれど、
異変があれば最初に気づく。

壊れそうなものがあれば、
前に立つ。

戌は、
目立たないまま
世界の均衡を保っている。


戌の年に生まれた人へ

戌年は、
責任を背負いやすい年だ。

頼られ、
任され、
気づけば守る側に立っている。

それは重い役割かもしれない。

けれど戌は、
「守ることで、物語は続く」
ということを知っている。

あなたが立っている場所は、
とても重要だ。


ねずみが始め、
丑が支え、
寅が前に出て、
卯が広げ、
巳が内に収め、
辰が流れを起こし、
午が走らせ、
未が受け止め、
申が試し、
酉が整えたあと。

戌は、
そのすべてを守り、
崩れないように立ち続ける。

十二支は、
進むための物語であると同時に、
守り抜くための物語でもある。

戌は、
その最後の番人なのだ。