
寅と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは
「強い」「怖い」「勢いがある」といった姿かもしれない。
牙をむき、爪を立て、
近づきがたい存在として描かれることも多い。
十二支の中でも、寅はとりわけ目立つ。
存在感があり、物語でも前に出てくる。
けれど本当に、
寅は「強いだけ」の干支なのだろうか。
丑の次に来る理由
十二支は、子(ねずみ)から始まる。
小さく、素早く、動き出す存在だ。
そのあとに来る丑は、
その動きを地面に定着させ、支え続ける役割を担っていた。
そして、その次に置かれているのが寅である。
ここでようやく、
前に出る存在が必要になる。
ねずみが始まりをつくり、
丑がそれを守り続けたあと、
寅は外に向かって力を引き受ける。
十二支は、勢いだけでは進まない。
順番には、意味がある。
寅が象徴するもの
寅が象徴するのは、
単なる強さや勇敢さではない。
それは、
力を持ってしまった存在の覚悟だ。
前に立つということ。
矢面に立つということ。
恐れられる役を引き受けるということ。
寅は、
「怖がられる側」を選ばされた存在でもある。
だからこそ、その力は制御されていなければならない。
「寅」の文字が示すもの
「寅」という字には、
芽が伸び、形を取り始める段階を表す意味がある。
内に蓄えられていた力が、
いよいよ外に現れ始める。
まだ完成ではない。
だが、もう隠れてはいない。
寅は、
現れる段階の干支なのだ。
写真の寅が語ること
写真の寅は、
大きく口を開け、強い表情をしている。
けれどよく見ると、
ただ暴れているわけではない。
足は地面をしっかりと捉え、
姿勢は崩れていない。
力は、制御されている。
この寅は、
怖さそのものではなく、
怖さを引き受けている姿に見える。
それが、この置物の面白さだ。
恐れられるという役割
寅は、好かれる干支ではないかもしれない。
近づきやすい存在でもない。
だが、
誰かが前に出なければならないとき、
誰かが強さを引き受けなければならないとき、
その役目は必要になる。
寅は、
目立つことを選んだのではない。
任されたのだ。
寅の年に生まれた人へ
寅年は、
強さを求められることが多い。
前に出ること。
決断すること。
ときに誤解されること。
それは簡単な役目ではない。
けれど寅は、
力をどう使うかを学ぶ干支でもある。
吠えるためではなく、
守るために。
前に立つ人ほど、
本当は慎重であることを、
寅は知っている。
ねずみが始め、
丑が支え、
寅が前に出る。
十二支は、
役割の物語だ。
寅は、
その物語の中で
最初に「強さ」を背負った存在なのである。

