
へびと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは
「怖い」「気味が悪い」「近づきたくない」といった印象かもしれない。
足もなく、
音も立てず、
気配を隠すように動く。
十二支の中でも、
巳はとりわけ誤解されやすい存在だ。
けれど本当に、
巳は「怖いだけ」の干支なのだろうか。
卯の次に来る理由
寅が前に出て力を引き受け、
卯がその緊張を和らげ、
世界に余白をつくった。
流れは、いったん落ち着いている。
ここで再び勢いを前に出せば、
世界はまた騒がしくなる。
そこで置かれているのが、巳だ。
巳は、
外へ向かう力を内へと引き戻す役。
広がったものを、
静かに内側へ折りたたむ。
それが、巳の役割だ。
巳が象徴するもの
巳が象徴するのは、
攻撃性ではなく知恵。
へびは、無駄に動かない。
力を誇示しない。
決定的な瞬間まで、じっと待つ。
それは弱さではなく、
状況を読む力だ。
巳は、
動かないことによって世界を観察する存在なのである。
「巳」の文字が示すもの
「巳」という字は、
胎内にあるもの、
まだ外に出ていない生命の形を表すと言われる。
卯で広がった世界が、
ここで再び内側へ向かう。
巳は、
内省の段階の干支だ。
外の世界を眺めながら、
自分の中で答えを育てる。
写真のへびが語ること
写真のへびは、
丸く身をたたんでいる。
伸びてもいない。
襲いかかってもいない。
その姿は、
静かで、閉じていて、
どこか守りの形をしている。
このへびは、
恐怖を振りまく存在ではない。
力を内に収めている姿に見える。
それこそが、巳の本質だ。
見えないところで考える役
巳は、
目立たない。
前にも出ない。
評価もされにくい。
けれど、
物事が大きく動く前には、
必ずこうした時間が必要になる。
考えること。
待つこと。
自分の内側を確かめること。
巳は、
行動の前に訪れる沈黙を担っている。
巳の年に生まれた人へ
巳年は、
派手な結果を求められる年ではない。
けれど、
深く考え、
じっくり選び、
無駄な動きをしない力を持っている。
急がなくていい。
焦らなくていい。
巳は、
「動く前に整える強さ」を
知っている。
ねずみが始め、
丑が支え、
寅が前に出て、
卯が広げたあと。
巳は、
そのすべてを胸の内にしまい込む。
十二支は、
行動の物語であると同時に、
思考の物語でもある。
巳は、
その最初の深い沈黙を担う干支なのだ。

