
辰と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは
「特別」「強大」「神秘的」といった印象かもしれない。
十二支の中で、
実在しない唯一の存在。
空を飛び、雲を呼び、
神や天と結びつけられてきた。
ほかの干支とは、
明らかに扱いが違う。
けれど本当に、
辰は「特別なだけ」の干支なのだろうか。
巳の次に来る理由
卯が世界に余白をつくり、
巳がその広がりを内へと収めた。
ここまでで、
動きは完全に内向きになっている。
考え、蓄え、
沈黙が続く。
この状態が長く続けば、
世界は停滞する。
そこで置かれているのが、辰だ。
辰は、
内に溜まったものを一気に外へ解き放つ役。
沈黙のあとに訪れる、
最初の大きな動き。
それが、辰の役割だ。
辰が象徴するもの
辰が象徴するのは、
力そのものではない。
流れだ。
風が起こり、
雲が動き、
雨が降る。
目に見えないものが、
世界を動かし始める。
辰は、
個人の力を超えた
大きなうねりを引き受けている。
「辰」の文字が示すもの
「辰」という字には、
震える、動く、
万物が活動を始める、
といった意味がある。
巳で内に溜め込まれたものが、
ここで一斉に動き出す。
辰は、
変化が避けられなくなる段階の干支だ。
写真の龍が語ること
写真の龍は、
細長く、しなやかで、
どこか軽やかだ。
力を誇示する姿ではない。
地面を踏みしめるでもない。
それでも、
全身が動きの中にある。
この龍は、
何かを支配しているようには見えない。
流れそのものになっている。
それが、辰という存在だ。
特別であることの重さ
辰は、
憧れられやすい。
力がある。
運が強い。
特別な年だと言われる。
けれど、
大きな流れを引き受けるということは、
自分では止められないということでもある。
辰は、
選ばれた存在であると同時に、
逃げられない役割を背負っている。
辰の年に生まれた人へ
辰年は、
自分の意思とは関係なく、
物事を動かしてしまうことがある。
望んでいなくても、
中心に立たされることがある。
それは、
力があるからではない。
流れを通す役を
任されているからだ。
辰は、
「自分が動く」のではなく、
「世界が動くのを通す」干支なのである。
ねずみが始め、
丑が支え、
寅が前に出て、
卯が広げ、
巳が内に収めたもの。
辰は、
それらすべてを巻き込み、
一気に外へと動かす。
十二支は、
役割の物語であり、
変化の物語でもある。
辰は、
その最初の大きな転換点なのだ。

